FC2ブログ

[ここのせつめい。]

模型製作や旅行の備忘録から、日々の取るに足らない些末まで、何の脈絡もなく扱ってます。いちおう、メインは鉄道模型と国道巡り。

主に模型製作の記録やら、旅行の記録やらを扱っていますが、たまによく分かんない記事が挟まれることがございます(

  1. 沢渡暴走機構 業務簿
  2.  » スポンサー広告
  3.  » 風化し往く過去への謳歌
  4.  » 四方山話
  5.  » 風化し往く過去への謳歌

[お知らせ。]

 いつの間にか秋も深まってきていろいろ辛い。

 なんやかんやで通年仕事が忙しいの、何とかなりませんかね><

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

風化し往く過去への謳歌

 原子力は二十世紀の知恵か。その問いに、胸を張ってイエスと答えられなくなったときに、この自分の人生の終点が来たというのは、偶然にしても、よかったと島田は思った。少なくとも人間の知恵の過信や傲慢を捨てることが出来ただけ、迷いに迷ってやっと誠実さという小さな果実に手が届いただけ、自分はよかったのだと思った。
高村薫 「神の火」より 


 昨日まで続いてきた日常は、今日も滞りなく、頑是なく、漠然と、終わるものなのだと思っていた。
 今日という日常は、明日もまた、永遠のように、続いていくものなのだと思っていた。

 日常とは、こんなにもあっけなく崩れ去るものだという事を、あの日、はじめて知った。

 己に絶望して、自ら途を絶ったことは何度かあった。
 けれど、否応なしにすべてを変えてしまう現実というものは、己の預かり知らぬところで、突然にやってくる。
 それを、嫌というほどに思い知らされた。



 2011年3月11日。14時46分。


 岩沼の海縁の道路で地震に見舞われ、とりあえず会社へ帰ろうという“帰巣本能”のままに、県道10号塩釜亘理線へ入ったは良いものの。

 そこから延々と続く渋滞の車列。
 つらつらと津波警報を知らせるラジオの音源。
 まったく進むことが出来ない、閖上五叉路の交差点。
 なんでも、先の閖上大橋で事故が起きているとかで、身動きが取れないとか。
 当然、信号なんぞは停電で機能しておらず、避難の車で交通麻痺の極みとなる。

 ラジオは「10mの津波が来ます! 直ちに避難してください!」と繰り返すが。
 果たして10mの津波とやらは、一体どこまで来るのさ?

 地震発生から1時間近くが経ち、「本当に津波なんて来るのか?」という猜疑と。
 「本当にそんなものが来たら、この程度の内陸地じゃ不味いんじゃないのか?」という素朴な疑念と。
 それは今にして思えば、本能の告げた警鐘だったんだろう。
 とは言え、閖上大橋方向は事故で行けぬ。さりとて、内陸へ抜ける左折の県道閖上港線も、大渋滞で延々と続く車列。
 何だかわからないけれど必死になって、記憶の隅にある裏道を伝って、名取川の堤防沿いを走る轍に駆け上がり、あとは無我夢中で国道4号へ脱出した。
 そんな次第で、僕は津波というものをまじまじと眺めた訳ではないし、暫くは僕が居た場所にどれほどの津波が来ていたのかすら、知る由もなかった。


 ひとつの、厳然たる事実がある。

 名取市閖上港に設置されていた津波計は、地震発生66分後、15時52分に第一波を計測しているという。
 閖上の交差点を離れた時刻を正確に記憶している訳ではないのだけど、15時40分頃までは間違いなく閖上の交差点で嵌っていたのは覚えている。あの、よく分からないけど咄嗟の判断が無かったら。

 名取市閖上地区では、死者・行方不明者1027名の尊い御霊が犠牲となった。
 地震後の、あの避難風景の中で、ともすれば緩慢とも思える風景の中にいた、どれだけの人々が犠牲になったのだろう。
 僕はたまたま、逃げ延びた。
 ただ、あと少し、判断を先延ばしにしたら。
 あと少し、あの場に留まっていたら――

 いまでも、背筋に寒気を覚えてしまうのだ。



 3年前の今日という日、東北地方は…否、日本は、多大なる犠牲を被りながら、さまざまの禍根を残した。
 二度と見たくない光景なんざは嫌という程見てきた。絶望の端緒も、耳を覆うような醜聞も…

 けれど、
 あの日、「被災地」というある種の最前線を生きてきた者として、忘れてはならぬ「教訓」も否応なく背負った訳だ。

 生きていく限り、詰まらない事も、下らない事も、取るに足らない瑣末も、敢えて踏まねばならない負の轍もあろう。
 だけどそれは、すべて無辜な現実というものの一端でしかあるまい。
 決して忘れない。過去として風化しない。未来永劫、事実を伝承していく。ただ、事実だけを。
 それが、あの日「たまたま死ななかった」僕に出来る、ささやかにして唯一の事である。


03314.jpg

※※


 東日本大震災で犠牲となった方々へ、被害に遭われた方々へ、心よりお見舞い申し上げます。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック

トラックバック URI
http://sawatr.blog41.fc2.com/tb.php/290-44657348
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。